アトラス杉(Cedrus atlantica)の精油は、香水のベースノートとして最も古くから使われてきた原料の一つです。モロッコのアトラス山脈で採取されるこの精油は、木の幹と根を水蒸気蒸留することで得られます。乾いた煙のような香りと、長時間皮膚に残る定着性が、調香師に好まれる理由です。
アトラス杉の産地と採取方法 ¶
アトラス杉の精油の主要産地はモロッコのミドルアトラス山脈です。標高1,500メートル以上の地域に自生する杉の木から、幹と根の木片を水蒸気蒸留します。蒸留時間は通常48〜72時間で、収率は木片の重量の約3〜4%です。産地によって精油の成分比率が異なり、特にセドロールとヒマカレンの比率が香りの印象を左右します。
香水におけるベースノートとしての役割 ¶
アトラス杉の精油は揮発速度が遅く、香水の中でベースノートとして機能します。他の原料の揮発を遅らせる定着剤としての役割も持ちます。特にローズやネロリなどの花系原料と組み合わせると、花の甘みを引き締め、長時間の持続性を与えます。Quaint Cedarwoodの最初のコンポジション「Cèdre 73」は、この定着性を最大限に活かした処方です。
天然精油と合成セドロールの違い ¶
市場に流通するセダーウッド系の原料には、天然精油のほかに合成セドロールがあります。合成品はコストが低く安定していますが、天然精油が持つ複雑な成分構成(セドロール以外にもヒマカレン、アルファ-セドレンなど)を再現することはできません。天然精油は年ごとに成分比率が変わるため、調香師は毎年処方を微調整する必要があります。
保管と劣化について ¶
アトラス杉の精油は比較的酸化しにくい原料ですが、直射日光と高温は避けるべきです。開封後は遮光瓶に入れ、15〜20度の環境で保管することで、2〜3年は品質を維持できます。フレグランスとして製品化された後も、同様の保管環境が香りの持続に影響します。
アトラス杉の精油は、香水の歴史の中で最も長く使われてきた原料の一つです。Quaint Cedarwoodでは、モロッコの産地から直接仕入れた精油を使い、1973年の最初のコンポジションから変わらない処方で「Cèdre 73」を作り続けています。